久木田所感への書簡

リフレクソロジーの発祥はアメリカで、ハンネ・マルカートもドーリン・ベイリーもヘディー・マザフレもユーニス・イングハムの代表的な3人の弟子らしいのです。
イングハムはヨーロッパで非常に多くのセミナーをしたという記録が残っています。
へディー・マザフレはフランスとスイスでスクールを開催していたようです。
若石神父もマザフレの本で独学した後、スイスに一時帰ったときに、マザフレのスクールで習い直しています。
神父は自伝的な本を出したようです。
まだ見てないのでぜひ見たいものです。
イッセルさん達のICRの昨年(2007年)の大会にはハンネ・マルカート女史が出席しています。
歴史の生き証人健在ですので、是非会ってみたいものです。
へディ・マザフレを中国式のルーツだといっている人や団体があるようですが、大きな間違いです。
全てはウイリアム・フィッツジェラルドユーニス・イングハムから始まったのです。

以上、久木田先生のコメント欄に載っている所感です。

Dr.ウイリアム・フィッツジェラルドが人体を10等分にわけた反射線を公表したのは1913年という説と1917年という説がありますが、どちらの説を採るにせよ、それ以前には経絡以外に足から全身につながる反応ラインを想定したものは皆無で、この人をもってリフレクソロジーの始まりとしても間違いないと小生も思います。

またユナイシス・イングハム女史は1939年、現在に至る反射チャートの原型を最初に公表しました。直接的なリフレクソロジーの始祖はこのイングハム女史であることは歴史的な事実でしょう。(英語読みではユーニス・イングハムが正しいのでしょうか?)

小生思うに、リフレクソロジーというものを定義しておく必要性を感じます。
この定義を曖昧なままにすると、リフレクソロジーの源流は中世ヨーロッパに遡ることができるとか、古代中国に遡れるとか好き勝手なことが言えてしまいます。確かに、足を施術の対象にするという行為は小生の拙文「ルーツ」でも述べているように5千年前に遡れることができます。しかし、これとて、壁画が残っているが故にそういえるわけで、本当のルーツは決して証明することのできない謎なのです。謎であるが故に好き勝手なことが言えます。ですから、どうしても定義の必要性を感じるのです。

小生はリフレクソロジーを以下のように定義したいと思います。
「反射区、若しくは反射域、或いは反射帯と呼ばれる、実体臓器が投影されるゾーンを前提にし、そのゾーンを刺激することによって何らかの反応を得ようとする療法」であると。

技法の差異や流派による反射区図表の違いは関係ありません。要は反射区というゾーンを基に施術するかどうか、という一点にかかってくると定義したわけです。

この定義に従いますと、久木田先生の論は正鵠を得たものとなると思います。
(まさに英国式であろうと中国式だろうと、その始まりはイングハムである)

反射区というものを基にする限り、それはリフレクソロジーなのであって、反射区を基にしながら勝手に別の名前で流派を立ち上げるというのはおかしな話しです。

これは他人のアイデアをパクっているに過ぎず、仏教では「法盗人」と呼び、地獄に落ちるとさえしています。

まあこの業界は宗教ではありませんので、地獄に落ちることはないと思いますが、道義的に如何なものか?と思う次第。

せいぜい、~式リフレクソロジーという名称が許されるくらいでしょう。

小生はかなり厳密にそれを考えていて、反射区を基に施術し、それを教える場合はリフレクソロジーと呼びます(日本式であるにしても)、反射区を基にしない、或いはその概念を大きく逸脱する施術は足証と呼びます。これが先駆者に対する敬意というものでしょう。

様々な流派がある中、イングハム女史に触れているところはかなり少ないのが現状ではないでしょうか。
今、手元にあるヘデイ・マザフレの著作(1976年刊)でさえ、イングハム女史のことには触れていません。ましてや、ヘディ・マザフレの反射区を参考にした若石健康法とその亜流派などは全く無視しております。

何故、反射区療法の始祖であるイングハム女史を無視するのか、意図的に書かないことによって、歴史を改ざんしようとしているのか、疑ってしまいたくなるくらいです。

いずれにせよ、久木田先生のお陰でリフレクソロジーの発祥と発展過程がすっきり整理され、感謝です。

技法的に各流派が自分のところが一番だと思っても良いのです。しかし少なくとも源流と発祥をはっきりさせて、自分がやっている施術に自信を持てば良いわけですから、箔をつけるために改ざんなどする必要はありませんし、文献もなく不確かな伝聞のような説に拠り所を見つける必要もありません。

考えてみれば小生もかつて、随分と不正確な歴史を講義していたものです。

あまりにも曖昧でボカされたところがあるので、最後は歴史の講義は教えたくなくなったくらいです。現在もあまり歴史の講義はやりません。

テキストを作る際も歴史を書きかけ、途中で止めました。論点がよく分からなかったというのが最大の理由ですが、今なら論点がはっきりしていますから、説明することが可能になりました。リフレに関してだけ言えば、発祥はアメリカであって、施術のもとになっている反射区チャートは最初にイングハム女史が作った、という実に単純な事実です。

各技法の違いはそれぞれのお国柄や、個人的な個性が出るに過ぎません。

今、小生は実践でリフレクソロジーを使うことはほとんどなく、大半が足証になっていますが、足証に至る入門編でリフレを教えています。リフレを教える以上、正しい歴史を教える義務があるとあらためて思い知った次第です。

コメント

よくぞ書いて下さいました。
某若健康法は「リフレクソロジー」ということでは無茶区茶こじつけな歴史を教えていますよね
「中国の庶民の間では脈々と受け継がれていたのでしょうさて時は飛んで20世紀初頭アメリカで……中国人にお返しすべく」って、どんだけ~っ、って感じです。
私も広島や横浜でご縁のあった方々に謝りたい

投稿: マッチー | 2008/07/28 10:03

他人を論難しますと、ブーメランのように我が身に跳ね返ってきます。50年も生きていると、そのことがよく分かってくるのですが、歴史については事実を優先しなければなりません。技法の優劣や効果の高低を論ずるのであれば、主観が入って、まさにブーメラン効果が発生すると思いますが、歴史だけは例外だと思うのです。
事実は事実として認め、そこから自派の優秀性を訴えれば良い。
その最初の歴史に曖昧さとボカシがあると、何故かその療法体系全体にインチキ臭さが漂うわけで、我々も気をつけなければならない一点ではありますね。
今般の久木田所感はそのことを真剣に考えさせてくれる良いキッカケになりました。
まあ、一般的には総称として、足つぼでも足揉みでも足裏健康法でも良いのですが、施術家のたまごを相手に曖昧な証拠もないようなことを言うのは宜しくない事です。

投稿: 亜美之介 | 2008/07/28 11:44

へディ・マザフレのことは、以前からそのルーツを知りたいと思っていました。
インターネットで検索しても若石神父のことを書いているサイトばかりで、へディ・マザフレに関するものは見つけにくかったのですが、ヨーロッパ系のサイトの幾つかに「イングハム女史の弟子」であった事の記載がありました。その中の1つReflexologiaの中に
Discipulos de Eunice Ingham(
ユーニス・イングハムの弟子たち)という項目があり3人の弟子の記述があります。
http:www.ecovisiones.cl/ecosalud/terapias/reflexologia.htm
別の話ですが、ブリティシュ・スクール・オブ・リフレクソロジー校長のアン・ギランダースという人が、フレグランス・ジャーナル主催の日本での講演で以下のように述べています。
「ユーニスはアメリカのセント・ピーターズポロにあった整形外科の大病院で物理療法士
をしていましたが、あるとき漢方医のチーム
が加わり、彼女にフット・チャートを示したのです。それは今日我々が目にするものと同じ様なものでした。
それらのチャートは非常に古いもので、羊皮紙に描かれており、医師たちはその図が、いかにして、数世紀にわたって家族に代々伝えられたかを語り、また、足は身体を反映する鏡であり、身体のどこかに不調があると、足の関連部位が敏感に反応するという考えを教えられながら育ってきた事を語ったのです。
足がいかに身体に反映しているかを知り、ユーニスは感動しました。親指は頭を、足の外側は肩を、内側は背骨を反映している、と言う具合です。・・・・・」
このアンギランダースと言う人は、1970年代にフロリダのイングハム女史の直系スクール(インターナショナル・インスティチュート・オブ・リフレクソロジー)で学び、勤
務し指導者となり世界各地にスクールを開設した人です。話した内容は真実でしょう。
それにしてもイングハム直系の人がこんなに
正直に伝えるとは・・・感激です。
(フレグランス社のcreabeaus編集部が出した「リフレクソロジーの基礎知識」と言う小冊子に残っています。)

投稿: クッキー | 2008/07/28 16:40

さらなる詳細、クッキー先生本当にありがとうございます。
正直に伝える某団体にもそうして欲しいものです

亜美之介先生は堂々と新しい足療法の歴史を作られたということで、先生亡きあとは私がお墓に壁画を描いてさしあげましょう。
髪ボサボサ、吸殻のハミ出た灰皿と焼酎ボトルの前でブログを入力する先生の図。
麗しきスタッフKさんの「そんなに不摂生してはいけませんよ」のセリフと、亜美之介先生が救った患者さまの「施術は素晴らしいけど私生活はボロボロね」のセリフをヒエログリフで。いや~我ながら最高傑作だ。

投稿: マッチー | 2008/07/28 21:17

さすが、マッチーさん!
小生がライター気取りでパソコンに向かう図は大体当たってます。
さすがに焼酎のボトルは転がっていませんけど。
イラストの大家であるマッチーの手による亜美之介壁画は第一級の史料価値が出るに違いありません。まあ4500年後くらいに。人類が滅亡してなきゃいいのですが・・・

投稿: 亜美之介 | 2008/07/29 10:09