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腹証(お腹の指圧)が効いた!ギックリ腰に・・・その5

腹証

『腹は生あるの本なり、故に百病ここに根ざす、ここを以って病を診するには必ず腹を候う』



江戸時代中期の漢方医・吉益東洞(1702~1773)の言葉です。



腹証は腹診とも言われていますが、古くは按腹とも言われていました。



あん摩で按腹のできるのは、
検校(あん摩の最高位)の位のある者に限るといわれたほど、その技術は難しいものとされていました。

 



しかし江戸時代末期に太田普斎は
「按腹図解」を著し、当時のあん摩の虚技曲手を批判し、素人、婦女子にもできる、単純な推圧による治療法を提唱したのです。



按摩を揉みさすることにして複雑な手技を誇り、
業界保護ために素人には真似の出来ないものにして、本来の治療効果をおろそかにしていた風潮を嘆いて、家庭療法にも活用できる事を主眼にした著書でした。 



「按腹図解」は、腹部施術だけを教えているものではなく、
全身治療を教えているものですが、腹部を最も重視して、古法按摩に戻り、単純推圧による経絡補瀉の術を施す事を伝えています。



日本の伝統的な指圧は、
太田普斎の「按腹図解」の流れを汲んでおり、古法按摩の姿を伝えているものです。

 



腹証(腹診、按腹)は診断と施術(治療)の両方を同時に行う技術です。



腹診は、診断のみのことを言うとの主張が西洋医学方面にありますが、
現代指圧の理論的第一人者である故増永静人師は、



著書「経絡と指圧」の中の一節でで以下のように述べています。

 



『中国では自覚症であった腹証を、
全面的に切診の領域に取り入れた日本独自の診療形式は、この意味で、世界に冠たる医学に発展したと言えるのである。



この方法が中国に逆輸入されたということも当然のことであろう。

 



しかるに現代の医家は、
この腹診の真意をすっかり忘れてしまっているのではないだろうか。



それは按の技術を知らず、
西洋の触診法を真似て腹診を行うからである。



鍼灸師は、
補瀉を逆転させた現行あん摩を学んでから鍼灸に入るからである。

 


古法の按は、ただ押すことでない、圧してじっと考える事である。



知覚神経を鈍磨させる一定圧の持続圧は、
原始感覚を興奮させて副交感性の圧反射をおこす。



このはねかえりは同時に触覚を鈍磨させて
じっと圧したままの術者の指先に原始感覚を呼び起こすのである。



そこで圧するものと圧されるものの間には二枚の皮膚があるのでなく、
自他の交流する生命的な膜があって、両者の圧反射を媒介して生命的に共感することが出来ることになる。 



これはもはや自覚症でも他覚症でもなく、
自他の交流する生命の一体感である。

 



このような切診を行う指圧をすると(これが真の診断即治療であるが)、
ときには患者の苦痛がそのまま術者の身体の苦痛として感じることがある。



このような自他一体感は常にあるわけではないが、
そうした経験から圧した響きによる患者の圧痛や異常感が、術者には患者のそこにあるものとして、感じることが出来るようになるのである。・・・中略

 



患者の苦痛が医者によって共感されることは、
いかなる精神療法を行うよりも患者にある種の安堵感を覚え、医者への信頼感を与えるものである。・・・後略』

 



増永師は腹証を行う際に、経絡の走行とは別に、
十二経をそれぞれ面として捉え、全体のバランスWhat_body01からそれぞれの部分の力動的な関係によって虚実をみると共に、これに補瀉の指圧を施せばよいように腹証の診断治療要図を創りました。



右がその図です。

 

 

話はギックリ腰に戻りますが、ギックリ腰をおこしたときに行う腹証、安定持続圧は、自律神経をリラックスさせ、副交感性の内臓反射をおこさせます。



それに腹部の押圧により、
腰椎を支える腹側筋が緩み弾力を回復し、防御性の緊張とスパズムの連鎖を断ち切ります。



次回は腹証のギックリ腰における効果についてです。

                             2009/09/09

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